例会「社長が変われば会社が変わる」
2022.05.10
報告者:株式会社七黒 代表取締役 七黒幸太郎氏
新型コロナウイルス感染症の影響で、今まで当たり前だった様々なことが通用しなくなりました。世の中の変化に対応し、会社はもちろん経営者も変わらなければなりません。
今回は、自分が経営者としてどのように変化し、会社が変わっていったかをお話させていただきます。
理想的な会社とは?
私たちの業界の仕事環境は大変過酷です。危険なことが多く、気力も体力も使う。どれだけ入念に準備対策しても十分ということはなく、雨の日には濡れないためにカッパを着ても、結局は汗でビショビショになる。現場では常に何かに追われている。
そもそも過酷な仕事ではあるのですが、従業員が少しでも働きやすい職場創りを進めるのは、大変重要なことです。
私が創りたい理想的な会社とは、このようなものです。
1人として不必要な人はいない
1人1人の想いと行動が、居心地の良い環境を創る
経済的にも時間的にもゆとりを持ち
皆で健康的に成長を続けている
こちらは私の自慢の写真のひとつ。 社員たちの笑顔であふれる会社を思い描き、今までやってきました。
自社紹介
株式会社 七黒
代表取締役:七黒幸太郎
創業:平成14年(今年21周年)
社 員 数:正社員15名
事 業 内 容:仮設足場事業
所在地:滋賀県高島市
https://kk-shichikuro.com/
私の会社は、琵琶湖があることで知られる滋賀県高島市というところにあります。きっと皆さんの想像以上に田舎です。平地が少なく、風も強く、12月から3月くらいまでは積雪で仕事になりません。高速道路や新幹線もなく、1時間に1本の在来線があるだけです。少し目立てば有名人で、小さな噂であっても何倍にも大きく膨らんでしまう。それくらい小さな街です。2020年時点の人口は47,544人で、1年あたり約600人も減り続けています。次の世代を担う経営者が社業を伸ばし、雇用を確立していかねば街が滅びてしまう。そういう深刻な課題を抱える地域でもあります。
足場事業について
戸建住宅、大規模改修、特設ステージ、特殊足場など、全般的に非常に高い評価をいただきながら営んでおります。
丁寧な仕事を心がけており、意識的にこの上ないほど綺麗に仕上げます。この行動は自身の心を整えることにも繋がると考えています。
街に明かりをプロジェクト
工事の足場だけではなく、職人がサンタクロースの衣装でイルミネーションを創る「街に明かりをプロジェクト」を行なっています。地域に求められる会社になることは大切なことだと考えています。こういった活動をしていると「あそこの足場屋さんやろ?」「毎年やってくれるの?」と地域の方から声をかけていただけることもあり、この街に必要とされている実感があります。
自己紹介
七黒 幸太郎(しちくろ こうたろう)
生年月日:昭和58年11月2日生まれ(38歳)
出身:滋賀県
家族:妻1人、子供3人 5人家族
趣味:魚釣り、昆虫採集、旅行、車、ゴルフ
性格:綺麗好き、人見知り
幼少期
幸太郎5歳の頃(一番右)
自然豊かな土地で育った私は、よく自宅の近所で昆虫や魚を捕って遊んでいました。ザリガニを持ち帰って母に見せると「すごい、すごい」と褒めてくれました。褒められると嬉しくて、もっと捕って喜ばせようと、次の日はザリガニとおたまじゃくしを、その次はもっとたくさん捕ってもっともっと母を喜ばせようと、遅い時間までよく遊びました。
初めのうちは母を喜ばせようとやっていたことでしたが、気付いたら虫捕り名人になっていました。今振り返ると、“誰かを喜ばせたい”という気持ちは本人が想像する以上に力を発揮させるものだと改めて感じます。
平成14年、18歳で足場屋を起業
高校2年で退学になってしまい、足場屋という職業に出逢いました。2年間のアルバイトを経て18歳の終わりに起業しました。それまで働いていた会社の下請け個人事業主として、資材を持たずに事業を回していました。
創業当時のトラック
まだお金がなかったので、こちらのトラックを35万円で売っていただきました。ボロボロだし、窓も手動でエアコンも効かない。廃車同然ですがそれでも当時の私の原動力となり、宝物のように見えたものです。仕事が終わったあとの夜間に倉庫を借りて自分で塗装していたら……
これは今思うとマズいですね……(笑)
今考えると、こんな車でお客さんのところへ行ったら、出入り禁止になってもおかしくない。
初めは、同級生だった友人・順一君を誘って仕事をしていました。彼は幼なじみで、二つ返事で承諾してくれて、まだ18歳と若かったので、友達の延長線上のような感覚で仕事をしていました。
技術的にも社会人としても、すべてにおいて未熟ではありましたが、仕事自体はとてもうまく行ったのです。親会社を驚かせるほどの仕事量をこなしていました。「もう終わったの?うそやろ?」なんて言われながら。
喜んでいただけることを原動力に、もっとやろう、もっとやろう、となってしまった。
お客さんのところで騒ぎすぎて元請さんに注意されたりもしました。お叱りを受けるうちに、私も経営者だという意識が芽生え始めました。
「お前は従業員で、俺は社長や」
「話し方を変えろ」
「会社は金が必要だから、日曜日も仕事をしろ」
一緒に働いてくれていた彼を、そんな言葉で縛り付けていました。最初は仲が良かったのが、だんだんと会話が減り、しまいには退職してしまいました。現在、順一君は協力会社として関わってくれていますが、当時は廃業を思案するほど悩んだものです。
創業当時の目的「私利私欲の塊」
創業当時の私の目的は……
昨日より今日、先月より今月。1円でも売上UP
憧れの車や時計が欲しい
同世代の同業者に負けたくない。成果を認めてほしい
とにかく、数字、数字、数字。無我夢中というより“無理夢中”という感じでした。真夏に大量の仕事量を詰めこみ、昼休憩以外は水分補給のわずかな時間しか与えませんでした。体調を崩して日中に吐いてしまう従業員もいたほどです。
たとえ人が足りなくなっても募集をすれば簡単に人材が集まってくる。その年に2人入り、年内に2人辞めてしまうような状態であっても、ローテーションすれば良いだけだと。体罰も教育だと思っていました。
数字が上がれば自分の物欲を満たす。そうして、ますます売り上げを求めるようになっていく。全ては自分のため。社員をコマのように使っていたのです。
また、トラックを増やすと利益が下がってしまうため“空中を使えるところは全て使え”ということで、4トントラックに8トンの資材を積むこともありました。
それほど無茶をしていましたから、数字だけは順調に右肩上がりで、利益はしっかり出ていました。とはいっても、技術が優れているわけでもなかったので、選んでもらうために安価で仕事を受けて数をこなして作り上げた結果というだけでした。
当時はまだ私も個人事業主だったため、残ったお金は自分の物と思い込んでいました。
トラック白けむり事件
ある日、私が運転していたトラックからびっくりするほど大量の白煙が上がり、交差点の真ん中で止まってしまいました。整備士は、燃料タンクに30リットルも水が入っていたということを言います。水を抜いてもらい、無事使える状態になったのですが、レッカーと修理費で17万円もかかりました。そして、その3日後にまた同じことが!
どうやら、当時19歳だったある従業員が怪しい……。遠方から2時間かけて電車通勤している子で、会社で定期券を買って渡していましたが「定期券を解約して得たお金でキャバクラ奢ってもらった」などという話がほかの社員から浮上。定期を解約したら電車で通勤はできないはず。しかし、免許を持っていない彼はどうやって出勤してるんだ?まさか……
給油タンクに水を入れて満タンにした……
やはり犯人はその社員でした。問題のトラックを無免許で運転して出勤していたのです。定期を解約してお金がない。お金がなくても出勤しなければならない。そこでトラックに乗って帰ろうと考えたのだと。燃料のゲージが減る。お金がないから給油できない。バレたくないからと、水で満タンにしていたのだそう。
こんなトラブルはほんの一例。警察から連絡がくることもありました。従業員同士が喧嘩したとか、会社のトラック使ってバイクを窃盗した(!)とか……。
そういうものの対処に圧倒的な時間がかかっていました。悪さをした従業員に体罰を与え、見せしめにしたりしていました。
それでも困りごとは尽きず、繰り返されてしまう。
「なぜ問題が止まないのか!」
「時間もない!!」
「腹が立つ!!!」
欲しい物は手に入るし、理想としていた立場も手に入れた。
それなのに、いつも満たされていない……。
私は当時、そんな気持ちでいました。
尊敬していた、祖父の急死
私の母方の祖父が81歳で急死しました。病気も入院もしたことがない元気なおじいちゃんで、私の人格を形成してくれたといっても過言ではないくらい、大好きで尊敬していました。
亡くなった日の朝6時、母から電話で訃報を聞き、あまりのショックで事実を飲み込めずにいましたが、それでも現場に行って、夜12時くらいまで仕事をしていました。
お通夜の最中も、社員とラーメン食べていました。昨日祖父が亡くなり、通夜をやっていると言うと「何しているんですか。どうして行かないのですか!」と社員。
私はスーパー勘違い経営者だった!
私は、自分の働く背中を従業員に見せなければいけないと思いこんでいました。どんなことあっても仕事が優先で家族は二の次。祖父の通夜にも行かず仕事をしている私の姿に、社員は感動してくれるのではないかと思っていたのです。大きな勘違いです。
その社員は、その後1ヶ月たらずで辞めていきました。
“僕の親族が亡くなっても葬式に行けないような会社なのか”と。
「変えないといけない。経営者である私が変わらないと……」
家族旅行の最中にトラブル
2011年の正月休み。家族と函館旅行をしていたときのことです。
雪の中を走る路面電車に乗って、3歳の息子は大はしゃぎ。家族との幸せな時間を過ごしていたわけです。
そのとき、社員から電話がかかってきました。「僕、会社辞めます」と。事情を聞くと、他の社員にどつかれた、やってられない、と言います。
私は北海道、社員は滋賀ですから、もちろんすぐに駆けつけることはできません。「いますぐ対応できないから冷静になってほしい」と言い、電話を切りました。
このとき、私はようやく自分の間違いを痛感したのです。
自分は経済的、時間的にも豊かな人生でありたい。
その為には、社員も同じく豊かな環境へ導く事が必要だ。
自分だったら、今の会社のような環境で働きたいとは思わないはずだ。
このままではいけない。
絶対に会社の環境を変えなければならない。
そう、決心しました。
新たな目的と労働環境変革
こうして、私は会社を変えるために新たな取り組みを始めました。
その指針を作成していた頃、ある方からこのような言葉をいただきました。
「七黒君は世の中に対して大きな使命を担っているように思う。それは、この会社に関わった人が人格的に大きく成長するキッカケを創ること」
この言葉を胸に作成した経営指針は次の通りです。
『豊かな空間を創造』
~安心して働き続けられる会社へ~
社員全員の人生を豊かに
仕事を通じて関わる人の心を豊かに
地域に必要な存在となり、豊かな地域社会に貢献する
足場屋らしくないかもしれないけど、真剣にみんなの人生を思って考えたものです。
「社長はそんな綺麗ごとを言っているけれど、具体的に何をするのか?」
社員はこのように聞いてきました。
ただ指針を掲げるだけでは不十分で、社員にはわかりやすい言葉で伝える必要があり、私はこう答えました。
経済的ゆとり× 時間のゆとり= 気持ちのゆとり
たとえば、日給では休みがあると給料が少なくなるので、全員月給にする。
お金あっても時間がなければ意味がないので、きちんと休みを設ける。
これらを従業員に約束しますが、これだけをやって会社の中身を変えないと倒産してしまいます。ですから、皆さんの協力が必要です。
では、具体的に従業員は何を協力すればいいのか。
「101%の好循環習慣」
3つのゆとりを約束するために、私が従業員に協力してもらったのは「101%の好循環習慣」です。
たとえば、ここにいる皆さんは車をお持ちですね。私も持っていて、以前何社か取引がありました。
ある車屋さんは特別悪いところはなく、至って普通の業者。ただ、煙草を吸いながら整備していたり、待ち合わせに2分遅れてきたりということがありました。
別の取引先は、担当者がとても良い方で、置いてあった空き缶を捨ててくれたり、設置したチャイルドシートのゆるみを確認してくれたり、ふとした瞬間に「いつもほんまにありがとうございます」と言ってくれたり。
技術の差はわかりませんが、2社には歴然とした違いがあります。こういう部分が心にインプットされていきます。
現在付き合いがある車屋さんは一社だけになりました。
小さな心がけが好印象にも悪印象にもつながる
いつも1分遅れてくる人。小さなことであっても、それを繰り返しているというだけで、重要なミッションを任せられないという不安を植え付けるようなことにつながります。
100%満足してもらうのは当たり前のことですが、あと1%上回る付加価値を提供できるかが大切。その1%を意識することを従業員にお願いしました。
101%を365日累乗すると37.8という数字になります。
逆に99.9%なら365日で0.03。
仕事の売り上げに置き換えて考えてみたらどうでしょうか。
当たり前のことをやっていても、普通の結果しか生まれません。だからといって、やりすぎたら続かない。でもあと1%なら頑張れる。
それほど、1%の努力は大切だと社員に伝えています。
足場の仕事にかかわらず、小さなことであっても
相手が困っていること、喜んでもらえることに
気付くことができる人になって欲しい。
お客様だけでなく
社内でも
誰に対しても。
好循環サイクル
では、101%の習慣を続けると具体的に会社はどのように変わるのか。
下のように好循環サイクルが生まれ、利益体質を向上することができます。
また、好循環によって利益が多くなったら、以前のように“欲しかった時計を買おう”などということではなく、その利益でさらに労働環境を改善していく。それが私の仕事です。たとえば、社員を増やしたり、教育に使ったり。利益を労働環境に反映するために、できることがたくさんあると思います。
これらのことを、全社員に共有しました。1%の頑張りによって、時間が増え、給料も増えるのだと。
初めはなかなか習慣として浸透しませんでしたが、諦めずに数年間続けていると、きちんと習慣化し始めました。さらに、結果も伴ってくるので皆率先して行動してくれるようになりました。
理想の会社とは?社員にアンケート
皆の人生をより良いものにしたい。
そして俺も幸せになるんや。
そのためにアンケートを取ろう。
“理想はどんな会社か”なんて聞くのはすごく勇気が要りました。社員が答えてくれたことに対して、もし会社が対応できなければ“悪い会社”だと思われてしまうかもしれない。
危険だなと思いましたが、結果的に良かったと感じています。
アンケートの意見を取り入れながら、徐々に労働環境改善に取り組みました。
こうして徐々に環境改善を積み重ねていくと、社員は前向きにチャレンジしてくれるようになっていきました。
そして、私のマインドにも大きな変化がありました。
社員の皆が喜んでくれることが、私自身の喜びになっていったのです。
チームビルディング研修
チームビルディング研修in石垣島
「もっと社員と一体化しよう」
そう考えて、チームビルディング研修にも参加しました。
高い意識を持った一人ひとりの存在があるからこそ、強く持続的な組織を創ることができるという認識をしっかりと持って欲しかったのです。
私たちが参加したのは、石垣島の美しい海で行うダイビング研修でした。
まずは座学で水中の危機管理や本研修の目的についてしっかり学び、それからダイビングのミッションに挑みます。
海底に散らばった部品を集め、40分以内に決められた形を作り上げるのですが、ミッションの形を知っているのはリーダーとサブリーダーのみで、水中では会話ができないためボディランゲージのみで指令を出します。互いの信頼度の確認として、背負った酸素ボンベを交換したりもします。
社長の自分がリタイアしてしまった!
結論から言いますと、制限時間内には完成できず43分かかり、2名がリタイアしました。一人は最年長の男性で、カナヅチで潜った瞬間気が動転してしまったのが原因。もう一人は、私でした。
皆のために、誰よりも多く部品を集めようと張り切っていた私は、どんどん酸素を消費し、35分で酸素の残量が危険値になってしまったのです。皆がミッションコンプリートして喜んでいる様子を、水上から眺めることになってしまいました。
会社がうまくいかない原因の90%以上は経営者!?
チームビルディング研修でわかることは、会社がうまくいかない理由の90%以上は経営者にあるということなのだそうです。自分が皆のために一生懸命動いてパンクしてしまうということだと。
これは大きな発見でした。振り返ると、あらゆる問題は自分が原因。“自分がやらなければ”という気持ちを捨て、社員を信じることの大切さを身をもって経験させてもらいました。
社員の成長の機会を奪っているのも、私自身だったのです。
自分がこんなことではあかん。
落ち着いて周りを見て、向かう方向を明確にして、より良い道筋を導く。
これは自分にしか出来ない。
自分以外に出来る事は全て任せる=信じる
任せるなら任せきる。
やらざるを得ない環境を与える。
そうすると、圧倒的に人は成長する。
変化と成果
こうして労働環境の改善を行い、好循環サイクルが生まれはじめたことを実感するなか、2020年4月コロナ禍緊急事態宣言が発表されました。
売り上げの変化
それまでの20年は一般住宅が売り上げの50%でしたが、一時は20%まで落ち込みました。それでも、集合住宅なども受けたりしながら、何とか売り上げを保ってきました。
6.4%の中に残るためには
10年前に存在していた会社で現存している数は6.4%といわれています。100社中たったの6社しか残らない。そのくらい会社は潰れていきます。外部環境が変わっても、それに対応できなければ潰れてしまいます。
10年先、6.4%の中に自社が残るためには何が必要か。私はこう考えます。
①時代(顧客)が求める会社である事
<外部環境の変化に合わせ、柔軟に変化できる>
②あなたの会社でないとダメと、選ばれる
<付加価値が明確で有る事>
③財務体質が健康的である事
<(例)全社員の給与を1年間支払える現預金など>
大変=「大きく変わる」と書きます。
大変な今。大きく変わるチャンスです。
環境改善の成果
環境改善を行って10年になりますが、非常に良い結果につながっていると実感しております。
圧倒的リピート率90%以上
お客様離れが劇的に減りました。
平均単価の5%~10%高く受注
住宅を10万でできるという同業他社があるなか、高くても弊社と決めてくださっているところが多く、12万円でも発注をいただけるようになりました。これは、どうしたら一人単価を上げられるかを考えられるようになったからです。監督が求めているもの、困りごとなどに対してアプローチし続け、単価は4万3千円まで上がりました。
自主的に会社を良くしようと行動する社員が増えた
最初は協力してほしいと言っても全く聞いてもらえませんでしたが、粘り強く続けていった結果、社員にも自主性が生まれ、積極的に行動に移してくれる人が多くなりました。
社長がいなくても問題無く会社が回る
社員が頑張ってくれるので、私は経営者としての仕事に集中できるようになりました。
自社紹介「clo-ba株式会社」
さらに、足場と並行してアパレル会社も立ち上げました。足場事業とは全く関係がないように思われますが、異業種にチャレンジすることが従業員の豊かな生活につながると考えています。足場の職人は働ける年齢に制限がありますが、他の事業を持っていることによって建設現場以外の雇用を創出することが可能になるのです。
clo-ba 株式会社
代表取締役:七黒幸太郎
創業:平成26年
社員数:10名(パートナー社員2名)
事業内容:アパレル小売業
所在地:滋賀県高島市
clo-ba株式会社はアパレル会社ですが、実店舗を持たないネットショップの運営が主な事業内容で、おかげさまで売り上げは右肩上がりです。
パソコンの前でずっと作業をしている社員の健康のために、事務所でヨガのワークショップを開催したり、親睦を深めるために懇親会を開催したりしています。
足場会への想い
2022年4月28日の例会
1年ほど前に星山氏から「足場屋の会を立ち上げたい」とお話があり、参加させていただくことになりました。私はこういった会は、私たちの業界にある大きな課題を乗り越えるために必要だと考えています。
足場業界の課題
肉体労働以外の選択肢が増え、建設業の中でも足場業界は特に人材難が加速すると考えられます。一社だけが労働環境を改善しても、職業のイメージは変えることができません。足場業界全体としてイメージ改革を行うことが、いま必要なのです。
足場労働環境のイメージと改善案
日本の足場業界全体が変化し、印象を改善することで、さまざまな問題・課題が解決できると考えております。課題を受け入れ変わっていくためには、まず経営者が学び、行動し、自社に反映させていく。そうして変わろうとする企業が声を掛け合いながら増えていくことで、これまで非現実的と考えられていた業界全体の課題解決を実現することができると思います。
①朝は早い、夜は遅い
<一般的な就労時間に近づけることが必要。あるいは早出残業代を明確に支給する>
②体力的に負荷がかかる(とくに夏場や繁忙期)
<人員は常に10%~20%余裕を持つ体制を整える>
③昭和さながらの指導環境
<若手の成長にコミットする丁寧な指導環境を整備する>
④未来の見える組織体制など
<現場だけではないキャリアプランを用意する>
社長が変われば会社は変わる
こちらの写真はヤードでふとしたときに撮影したもの。
私は自分の会社をこのようにしたかった。この写真を見て、ほっとするのです。
1人として不必要な人がいなくて
1人1人の想いと行動が居心地の良い環境を創る
経済的にも時間的にもゆとりを持っていて
皆で健康的に成長を続けている
そんな環境を創りたい
仕事を通じて人を磨き高める環境を整え
この会社で働ける事を誇りに思える文化を培う
地域経済を盛り上げる原動力となる人財・会社を育てる
自分自身が誇れる会社へ
こういった思いが、社員のみならず、自分自身の人生をも豊かにすると思っています。
是非、共に学び、意識高く良い会社を創り、豊かな人生を現実させましょう。
質疑応答
報告者・七黒氏の発表後、グループ毎に質疑
<質問①プレイヤーから経営者になるためには?>
<回答>
以前は私も「なかなか人に任せられない」「従業員を信用できない」「人任せにすると、しわ寄せが自分にくる」といったことを思っていました。この点を改善すれば良いと考え、いろいろな経済団体の役を受けて、自分がプレイヤー以外の役割をやらざるを得ない環境にし、人に任せること、自分の役割に専念することを心がけるようにしています。–七黒氏
<質問②寝坊する従業員にはどう対処すれば良いでしょうか>
<回答>
寝坊をなくすためには自分自身が寝坊しないことがまず一つですが、寝坊にかかわらず、本人に主体性を持たせることが大切だと感じます。寝坊するということは主体性がないということになります。–七黒氏
<質問③職人の定着率を上げるためには?>
<回答>
今ではほとんどの人が辞めない会社になることができました。夢を叶えるために優秀な方が独立されたり、若い社員さんがご両親が営む会社の後継者となり退職ということはありました。それでも、自分の会社を選んでもらえなかったことに課題は感じます。
以前は丼勘定で給料を決めていましたが、現在は社労士と一緒に給料規定を作っています。–七黒氏
<質問④週休二日制をどのように定着させている?>
<回答>
あらかじめ毎月の第一土曜日は全従業員が休むこととして会社のカレンダーに入れています。5年以内には完全週休2日制にする予定です。–七黒氏
<質問⑤社内ミーティングで何をしている?>
<回答>日々起こることを吸い上げて、ミーティングで評価しています。「ここをこうすると101%になるよね」ということを提案したり、危険だったこと、やって良かったことを評価したりして、経験を共有しながら積み上げています。また数字達成率や目標なども話します。また、ミーティングは30分以内に終わらせるようにしています。–七黒氏
<質問⑥社長は会社で何をしている?>
<回答>
極力何もしないようにしています。これは、社員の自主性の妨げにならないためにです。気づかれないようにトイレ掃除をしたりしています。–七黒氏
<質問⑦経営理念を社員に落とし込むためには?>
<回答>
経営理念は、習慣的に伝える意識と工夫をしています。ミーティングで習慣的に、また新年会や忘年会でも改めて伝えます。さらに、トイレの見える場所に貼るということもしています。理念をしっかりと表明し、違うことをしている人がいたら、どう違うのかをしっかり伝えています。–七黒氏
<質問⑧現在のお悩みは?>
<回答>
私たちの職種は短命であると言われ続けてきましたが、私としては、義務がある・ないにかかわらず、従業員を終身雇用したいと思っています。社員自身の問題もありますが、会社として環境を創り出す努力はしていきます。“この仕事ができれば終身雇用できる”という場所を明確にして「自分も頑張れば働き続けられる!」という希望が持てる会社にしたいと考えています。
現状、それがまだできていないことが課題だと思います。–七黒氏